既存入居者の退去を減らす

1.入居中から行う空室対策こそ効果がある

空室対策と言えば、部屋が空いてから行うもののように考えるオーナーさまが多いのではないでしょうか。しかし、実際には空室が出てから行うのではなく、入居者様が居住している時から、つまりは常に意識して行うことが大切なのです。

従来であれば、満室の時には「部屋は埋まっているから、費用や手間をかける必要はない」と考えるのが普通でした。確かに満室時は家賃収入は高く、支出は低いので、「収益は大きく」なります。(収益が大きいと税金も高くなる点も注意が必要です。)しかし、必ず退去はあるので、空室が目立ち始めてから手間と費用をかけてこれを埋めようとすると、家賃収入が減った中での支出増となり、「収益は小さく」なります。これでは、収益は安定せず、振幅の大きな賃貸経営となってしまいます。

空室損失の構図

私たちがお勧めしているのは、満室時でも空室対策に費用と手間をかける考え方です。

例えば、数年居住したAさんが退去することになった場合、オーナーさまは空室を埋めるためにリフォームに費用をかけたり、あるいは家賃を下げたりします、このように、借主さんの入居中は何もしないで、退去されると費用をかけるような従来の空室対策では、借主さん同士の間に不公平が起きることになります。入ったときと出るときで、「部屋の価値」に差があるのですから。

一方で、Aさんが居住している期間に、Aさんの要望を叶えるべく小さな費用と手間をかけていれば、Aさんが、この施設に不満で退去する、ということは起こりません(退去を防げる可能性もあります)。さらにAさんの居住中も「物件の競争力」が保たれていますので、次の借主さんのために、特別に大きな費用をかける必要もありません。

安定的な家賃収入の構図

このような手間と費用は、借主さんが入居中と、退去したあと、どちらでかけたほうが価値が高いのでしょうか。長期的に見て「多くの収益」につながる空室対策とは、「空いてから行う」ものではなく、常に意識して実践し続けるものなのです。

2.繁忙期=お客様が多いわけではない

繁忙期といえばお客様が多くなる時期と考えがちです。しかし、賃貸管理業界では「春の繁忙期に部屋を埋めましょう」と言われるものの、実際には、お客さまが「多く来る」のではなく、ただ「動く」だけなのです。

 

例として、1000席の会場に、800人のお客様が入っているのを想像してください。200席は空いています。全国的な入居率は、ほぼこのような状況です。そして春になると、100人のお客さまが他の会場へと出て行き、入れ替わりに、100人の新たなお客さまが来場されます。もともと200席が空いているところに、100人が出て行って300席が空いている会場で、新たな100人が自分の好きな椅子を探すのです。全員が着席しても、やはり200席は空いたまま、埋まるわけではありません。

ちなみに、椅子(=物件)にも色々なタイプがあり、贅沢なソファーから丸椅子までさまざま。お客様は好みや料金により、どれを選ぶか決めて行きます。その中で、私たちはお客様に選ばれ、長く座っていただき、席を立たれることのないようにしていかねばなりません。

そのためには、お客さまに座っていただいている時(=入居中)も、「座り心地を良くする努力」が必要です。メンテナンスだけでなく、機能や見た目の維持と向上に気を配っていくのです。座り心地が良ければ、余程の事情がなければ「席を変える必要」はありませんし、席を立たれても、またすぐに選んでいただけるはずだからです。

3.常に「空室対策」を意識するとは

たとえば12月の時点で、30戸のうち5戸が空いていたら「この5戸を何とか埋めたい」と考えるのが、従来の空室対策。しかし、お客様が動く繁忙期、さらに新たな退去の可能性も考えなければいけません。

ですから、まずは入居中の25戸の借主さんに、「4月までに退室される予定はありますか」と聞いていきます。もし4人の借主さんが「引っ越しを予定している」と答えたとしたら、そのときは退去の理由を尋ねます。その結果、2人の借主さんから、「同じ条件で“もっといい”貸室を探したい」というお声をいただきました。その借主さんの希望する、設備の追加やリフォーム行うことで、「引っ越しを思いとどまって」いただくことが出来ました。これで4月までに埋めるべきなのは、最初の5部屋に2件の退室が加わって7部屋となります。この時点で、退去を予定した借主さん要望も参考にしながら、設備追加やリフォーム等、早期に満室になるよう対策を行います。

そしてさらに、常に「空室対策」を意識した賃貸経営のために、満室近くなってからも入居中の21戸の借主さんに対して順番に費用と手間をかけていくのです。12月の時点と比べて5戸分の家賃収入が増えているので、その半分くらいをかければ、一部屋ずつ、希望する設備追加やリフォームをする資金は捻出できるはずです。長く暮らしている借主さんの満足度もあがります。このような空室対策を続けることで、「収益の振幅」の小さな安定した経営が可能になるのです。空室対策は「満室のとき」から手を打ち続けることがポイントです。新規のお客様だけを見るのではなく、まずは既存の入居者様を大切にしましょう。